第一章 「奇跡の剣」

折れた1本のオールを必死に動かし、小船を漕いでいる一人の少年…。名前は『じゅえる・まりおす』、まだ7才の少年であった。かれは、残り少ない水と固くなったパンを口に、幾日も漂流をしていた。陸地などあろうはずも無いこのあたり、しかし、まりおすは今日も必死に小船を漕ぎ続けていた。

今まで、さんさんと光を注いでいた空も、だんだん暗い雲に覆われ、海はみるみる深い色に染まっていった。「雨だ!」、永い漂流のはての初めての雨であった。水も尽きかけていたこの時、まりおすにとって、恵みの雨であった。少しでも水を貯めようと、まりおすは、水筒の代わりに使っていた壺や、革の鞄を広げて天に向けた。雨はだんだん強くなり、壺や鞄をいっぱいにするどころか、小船の底にもだんだん水を貯めていった。小船は徐々に水面に近づいていった。風も強くなり、しだいに荒波が小船をゆらし始めた。木で造られた小船は沈んでいかないものの、波にもまれている板切れと変わらなかった。まりおすは、必死にそれにしがみつくしかなかった。彼は、腰に巻いてあったロープをとると、小船の取っ手に巻きつけて、反対側を自分の腕に巻きつけた。細い腕に巻きつけたロープの隙間からは血がにじんできた。しかし、これでまりおす自身が海に沈むことは無かった。彼は、激しい揺れと、腕の痛さや疲労で次第に意識を失っていった。

あれから、どれくらい時間がたったのだろうか、あれほど荒れていた海は、嘘のように静まり、波の音すらしなくなった。あたりはすっかり闇に包まれ、まだ、空は曇っているのか星ひとつ見えない。まるで時間が止まってしまったかのような感じがした。朝が来るのを待とう。まりおすは、眠りについた。