第一章 「奇跡の剣」

辺りが薄っすらと明るくなってきた。まりおすは、その身を海に沈めることなく、ゆっくりと目を開いた。濃い霧のせいで、廻りは何も見えない。わずか数メートル先の海が見えるだけであった。彼は、腕に巻きつけていたロープを解くと、濡れた服を破り傷口を覆った。小船にあった彼の持ち物は、すべて海に消えていた。大事にしていたパンや水も失っていた。まりおすには絶望しか残っていなかった。

小船は、海の流れに任せるしかなかった。なすすべも無いまま、ただ目を閉じて、からだを横たえていた。きやすめなのか、少しずつ小船は流れているような気がした。辺りは相変わらず霧で何も見えない、彼は、目ではわからないが、体で少し感じとっていた。どこでもいいから、流れていってくれ。彼はそう願った。願いが届いたのか確かに小船は流れている。その流れは徐々に速くなっていった。まりおすは絶望のふちから一歩逃れたような気がした。彼は起き上がると腕を海につけ、どこか分からない流れの果てへ腕で漕ぎ始めた。

どれくらい漕いだだろうか、微かに前方に黒い影が浮かんできた。まりおすは、小船から身を乗り出して前を見つめた。黒い影はだんだん大きくなってくる。何かはわからないが彼の心は、多くの安堵感に包まれた。黒い影は、ますます大きくなっていった。

 岩だ!まりおすは心で叫んだ。助かった、彼はそう思った。霧の向こうから現れた黒々とした岩は、その姿をはっきりと見せてきた。